『肺炎球菌ワクチン』について
『肺炎球菌』とは
肺炎球菌は、体力が落ちている時や高齢になって免疫力が弱くなってくると、肺炎、気管支炎などの呼吸器感染症や副鼻腔炎、中耳炎、髄膜炎などの病気を引き起こします。
肺炎球菌による肺炎は、成人肺炎の25%~40%を占め、特に高齢者での重篤化が問題となっています。予防接種には肺炎の重症化を予防したり、死亡のリスクを軽減させる効果があります。
特に肺炎球菌に感染しやすく、重症化しやすい方は次のような人です。
- 65歳以上の高齢者の方
- タバコを吸われている方
- 長期療養施設に入居している方
- 手術で脾臓を摘出された方や生まれつき脾臓がない方
- 免疫機能が低下している方
- 慢性的な病気の方(心不全や慢性肺疾患・糖尿病・肝疾患・アルコール依存症の方など)
上記の方は特に予防するためのワクチンが重要です。
肺炎球菌ワクチンの種類
PCV13(プレベナー®, ファイザー)は13種類、PCV15(バクニュバンス®, MSD)は15種類の肺炎球菌の莢膜多糖体に、キャリア蛋白を結合させたワクチンで、PPSV23(23価肺炎球菌, ニューモバックスNP®)は23種類の肺炎球菌株の莢膜ポリサッカライドをワクチンとしたものです。
肺炎球菌ワクチンの違いについて
PPSVとPCVという二種類の大きな違いは免疫誘導能力の違いです。
PPSV(ニューモバックスNP®)は肺炎球菌の莢膜多糖体(ポリサッカライド:細菌の外側を包む膜のこと)をワクチンにしたもので、免疫原性が低くT細胞「非」依存的な免疫応答を誘導します。
PCV(プレベナー®やバクニュバンス®)は抗原となる肺炎球菌の莢膜多糖体に、キャリア蛋白を結合させたことで、T細胞依存型の免疫応答の誘導によりメモリーB細胞の免疫応答を誘導し、長期間抗体記憶が保持されます。
ニューモバックスNPが5年ごとの接種が推奨されているのに対し、プレベナー13®やバクニュバンス®は生涯で1回のみの接種となります。
ニューモバックスNP®
ニューモバックスNP®は、23種類の肺炎球菌に対応したワクチンで、肺炎球菌感染症の65〜68%の種類に対応しています。1回の接種で23種類のほとんどに対し、有効レベル以上の免疫ができ、その免疫は5年程度続きます。予防のために5年毎に継続的に接種することが推奨されています。
65歳以上で最初の1回のみは、行政より案内が届き助成を受け接種することができます。2回目以降の助成はなく自費での接種です。
プレベナー13®
プレベナー13®は13種類に対応し、肺炎球菌全体の31%の種類に対応していると報告されています。効果の持続性は長く、生涯で1回のみの接種で十分です。プレベナー13®には助成制度はなく自費での接種になります。
バクニュバンス®
バクニュバンスは成人における肺炎球菌(血清型1、3、4、5、6A、6B、7F、9V、14、18C、19A、19F、22F、23F 及び33F)による感染症の予防が可能となり、プレベナー13®の13種類よりも多い15種類の肺炎球菌の型をカバーすることができます。プレベナー13®同様に自費での接種です。
肺炎球菌ワクチンは何を打てばよいの?
2022年1月に米国CDCは65歳以上の全ての成人、PCVを未接種あるいは接種歴が不明で19~64歳の慢性疾病のある成人に対してPCV15-PPSV23の連続接種を推奨しました。これまでの研究成績からは、PCV-PPSV23の接種間隔が長い場合に免疫応答が高まることが示唆されています。
以上を踏まえますと、感染リスクの高い基礎疾患のある方はまずプレベナー®かバクニュバンス®を接種し、1年以上の間隔をおいて定期接種を利用して65歳でPPSV23(ニューモバックスNP®)の接種を勧めます。
既にPPSV23を接種済みの方は1年から4年あけてPCVを追加後PPSV23を定期的に接種していくことが推奨されます。
参考資料
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