RSウイルスワクチン アレックスビーについて
RSウイルス感染症とは?
RSウイルス感染症は、RSウイルスにより引き起こされる呼吸器感染症で1)、2歳までにほぼ100%が感染し、生涯にわたって何度も感染と発症を繰り返します2)。
そのため、乳幼児に限らず、成人、その中でも特に高齢者にも影響を及ぼす可能性もあります。
喘息や心疾患など、慢性の基礎疾患をお持ちの方にはワクチン接種を推奨いたします。
1)IASR Vol.43 p87-88:2022年4月号
「新型コロナウイルス流行期に高齢者施設で発生したRSV-Bの集団感染事例」
2)国立感染症研究所 感染症発生動向調査週報 2023年第28号
〈注目すべき感染症〉RSウイルス感染症
https://www.niid.go.jp/niid/ja/herpangina-m/herpangina-idwrc/11850-idwrc-2328.html
(アクセス 2023年11月)
RSウイルス感染症の経過
多くの成人は軽度の症状ですが、発熱や鼻水、咳などが現れます。通常は数日で回復します。しかしながら一部の人は気管支炎や肺炎に進行する可能性があり、喘息やCOPD、心疾患などの基礎疾患をお持ちの方はそれらを悪化させる可能性があります。1, 2)。
1)Centers for Disease Control and Prevention(CDC), RSV in older adults and adults with chronic medical conditions.
https://www.cdc.gov/rsv/high-risk/older-adults.html(アクセス 2023年11月)
2)Ivey KS et al:J Am Coll Cardiol 2018;71(14),1574-1583
3)堤裕幸:ウイルス 2005;55(1),77-84
RSウイルス感染症で、注意が必要な方
1)Centers for Disease Control and Prevention(CDC),RSV in older adults and adults with chronic medical conditions.
https://www.cdc.gov/rsv/high-risk/older-adults.html(アクセス 2023年4月)
2)Belongia EA et al:Open Forum Infect Dis 2018; 5(12),ofy316
3)Branche AR et al:Clin Infect Dis 2022;74(6),1004-1011
4)Wyffels V et al:Adv Ther 2020;37(3),1203-1217
5)Ivey KS et al:J Am Coll Cardiol 2018;71(14),1574-1583
基礎疾患があると、入院リスクが高くなるの?
喘息、COPD、うっ血性心不全、冠動脈疾患、糖尿病などの基礎疾患がある場合、基礎疾患がない人に比べ、RSウイルス感染による入院率が高まることが報告されています(海外データ)。
対象:
RSウイルス流行3シーズンに急性呼吸器疾患の症状2種以上または心肺基礎疾患の増悪によりニューヨーク州の2つの地域の医療施設3ヵ所に入院したRSウイルス感染症患者1,099例
方法:
前向き人口ベース調査研究。年齢層別の100,000人当たりのRSウイルス感染症入院率を算出し、基礎疾患有無別の年間RSウイルス感染症入院率を比較した。
本研究の限界:
本データは郊外および都市部の集団を代表しているが、米国成人集団全体ではなく、一般的な結論を導くのは難しい。基礎疾患については、自己申告および電子カルテより抽出し、その内容を確認していない。調査期間にRSウイルス感染症のアクティブサーベイランス(積極的な監視療法)を実施していないが、調査チームにより陽性患者を追加した。
Branche AR et al:Clin Infect Dis 2022;74(6),1004-1011より作図
RSウイルス感染症の治療と予防
現時点ではRSウイルス感染症(成人)には、直接的な治療薬がありません1)。
軽症の場合2)解熱鎮痛薬、水分補給など
重症の場合3)必要に応じて酸素投与、輸液、呼吸器管理
1)厚生労働省 RSウイルス感染症Q&A(令和5年9月28日改訂)
https://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou19/rs_qa.html(アクセス 2023年11月)
2)Centers for Disease Control and Prevention(CDC), RSV in older adults and adults with chronic medical conditions.
https://www.cdc.gov/rsv/high-risk/older-adults.html(アクセス 2023年11月)
3)国立感染症研究所 感染症発生動向調査週報 2023年第28号 〈注目すべき感染症〉RSウイルス感染症
https://www.niid.go.jp/niid/ja/herpangina-m/herpangina-idwrc/11850-idwrc-2328.html(アクセス 2023年11月)
基本的な予防対策はマスク着用と手洗いです1)。60歳以上の方は予防接種が可能です。
1)Centers for Disease Control and Prevention(CDC), RSV prevention.
https://www.cdc.gov/rsv/about/prevention.html(アクセス 2023年11月)
アレックスビー筋注用は、60歳以上の方が対象のRSウイルス感染症を予防するためのワクチンです
アレックスビーの効果
RSウイルス感染症に対する効果(日本人を含む海外データ)
- 60歳以上で82.6%
- 基礎疾患*がある60歳以上で94.6%
*慢性閉塞性肺疾患(COPD)、喘息、慢性呼吸器/肺疾患、1型または2型糖尿病、慢性心不全、進行した肝疾患または腎疾患
※追跡期間の中央値は6.7ヵ月
対象:
60歳以上の成人24‚966例(日本人1‚038例)
方法:
無作為化、観察者盲検、プラセボ対照、国際共同第Ⅲ相試験
評価項目:
- 〈主要評価項目〉
- ・RSウイルス感染による下気道疾患の初回発現に対する有効性(検証的解析項目)
- 〈副次評価項目〉
- ・有効性 RSウイルス感染による下気道疾患の初回発現に対するベースライン時の併存疾患別有効性*
*ベースライン時の併存疾患別に有効性のサブグループ解析を行うことを事前に規定した。
- ・安全性 [ 副反応]:特定有害事象(接種部位特定有害事象、全身性特定有害事象)
承認時評価資料:国際共同第Ⅲ相試験(RSV OA=ADJ-006試験)
アレックスビーの副反応
多くの方に注射部位の痛みや腫れがあらわれます。また、注射部位以外の症状として頭痛、筋肉痛、関節痛などがあらわれることが報告されています(日本人を含む海外データ)。
注射部位の副反応
- 痛み(60.9%)
- 赤み(7.5%)
- 腫れ(5.5%)
注射部位以外の副反応
- 頭痛(27. 2%)
- 筋肉痛(28.9%)
- 疲労(33.6%)
- 発熱(2.0%)
- 関節痛(18.1%)
承認時評価資料:国際共同第Ⅲ相試験(RSV OA=ADJ-006試験)
気になる症状があれば、医師にご相談ください。
アレックスビー接種時の注意事項
以下に該当する方は予防接種を受けることができません
- 体温が37.5度以上の方
- 重い急性疾患を患ったことがある方
- 過去にこのワクチンの成分によってアナフィラキシーを起こしたことがある方
- その他、医師が予防接種を受けることが不適当と判断した方
次の方は予防接種を受ける前に医師にご相談ください
- 心臓血管系・腎臓・肝臓・血液などの基礎疾患のある方
- 予防接種で接種後2日以内に発熱のみられた方、全身性発疹などのアレルギーを疑う症状がみられた方
- このワクチンの成分に対して、アレルギーを起こすおそれのある方
- 過去にけいれんを起こしたことのある方
- 血小板が少ない方や出血しやすい方、抗凝固療法をされている方
- 過去に免疫不全と診断された方、近親者に先天性免疫不全症の方がいる方
接種後は、以下の点に注意が必要です
- 接種後30分程度は、院内で安静にしていましょう。
体調の変化がないことを確認しましょう。 - 接種当日は激しい運動を避け、注射部位を清潔に保ってください。
接種当日の入浴は差し支えありません。 - 注射部位の異常な反応や体調の変化を感じた場合は、すぐに医師の診察を受けてください。