便秘について
便秘は満足できる排便がない状態をいいます。大きく「排便回数の減少」と「排便困難」に分けれらます。「排便回数の減少」はイメージしやすいと思いますが、排便時の過度のいきみ、便が硬くて出にくい、便が出切らず残っている感じ(残便感)などの「排便困難」も便秘に含まれます。
便秘は大腸がんなどの疾患の症状として現れるケースもありますので楽観視できません。
便秘が続く場合は大腸カメラなどで精密検査することをお奨めいたします。
便秘の主な原因
- 運動不足
- 食事制限(ダイエットなど)
- 朝食を摂らない
- 食物繊維不足
- 水分不足
- ストレス
- 便意のがまん
- 下剤の乱用
- 生活習慣、生活環境の変化など
慢性便秘症の主な症状
- 排便が週に3回未満
- 硬い便、兎糞状の便
- 便の量が少ない
- 残便感
- おなかが張る、腹痛、下腹部の不快感
- 強くいきまないと排便できない、いきんでも排便できない
便秘の種類
器質性便秘
大腸がん、潰瘍性大腸炎、内臓癒着による狭窄、腸捻転など、疾患を原因とした便の通過障害による便秘です。このタイプの便秘では、まず元の病気を治すことが基本です。
機能性便秘
大腸機能異常などによって引き起こされる便秘です。機能性便秘は以下のように分類されます。
- 痙攣性便秘
- 自律神経の乱れが原因で大腸の一部が痙攣性の収縮を起こし便の通過に時間がかかり過ぎて起こる便秘です。ストレスの影響が強いと考えられています。
- 弛緩性便秘
- 蠕動運動が弱まりそれが原因で起こる便秘です。蠕動運動は加齢や運動不足で低下し、それが原因で便意が弱くなります。高齢者が便秘しやすい原因の一つです。
- 直腸性便秘
- 便意を習慣的にがまんしていると神経の感度が鈍って、直腸に便が入っても便意を催さなくなります。女性が便秘しがちな理由の一つです。また最近、温水洗浄便座の水を肛門の奥まで入れるために神経の感度が鈍り、便秘になる人が増えています。
- 便秘型過敏性腸症候群
- 機能性便秘の一つです。過敏性腸症候群をIBSと言います。IBSの診断には国際的な基準が用いられます。
IBSの診断基準(ローマⅢ基準)
最近3ヵ月の間に、月に3日以上にわたってお腹の痛みや不快感が繰り返し起こり、下記の2項目以上の特徴を示す。
- 排便によって症状がやわらぐ
- 症状とともに排便の回数が変わる(増えたり減ったりする)
- 症状とともに便の形状(外観)が変わる(柔らかくなったり硬くなったりする)
機能性便秘の中で、この診断基準を満たすものが便秘型IBSという診断になります。とはいえ両者が明確に区別できるわけではなく、ある時は過敏性腸症候群(IBS)の診断基準を満たしているが、あるときは満たしていないということも少なくないでしょう。
- 症候性便秘
- 甲状腺機能低下症や副甲状腺機能亢進症、糖尿病、神経疾患などの基礎疾患が原因で蠕動運動が弱くなり便秘になるタイプです。
- 薬剤性便秘
- 服用薬(咳止め、抗うつ薬、抗コリン薬など)の影響で便秘になることがあります。
たかが便秘、されど便秘
「たかが便秘」と甘くみていると、大腸の中で便がますます硬くなり、症状が余計ひどくなる「便秘の悪循環」が生じてしまいます。さらには痔、脱肛・直腸粘膜脱、糞便塞栓症、直腸潰瘍などの「便秘の合併症」とも言える弊害が生じてきます。
また便秘は肌荒れの原因にもなっていることは多くの女性が認識していることではないでしょうか。肩こりや腰痛、イライラなどの原因になるとも言われています。最近では高齢者における認知機能への影響も危惧されています。
※出典:日本臨床内科医会ホームページ
便秘の治療
便秘は下記の方法で治療します。
- 食生活と生活習慣の改善
- 便秘のタイプに応じた薬剤(内服薬、坐剤、漢方薬)を使用した治療
生活習慣の改善をベースとして、患者さんや症状に適した薬剤を使用しながら治療していきます。