機能性ディスペプシアについて
そもそもディスペプシアとは、胃の痛みやもたれなどの不快な腹部の症状を指す医学用語です。
「胃が痛い」「胃がもたれる」という症状で受診し、胃カメラなどで検査したが「痛みの原因となる異常はない」と言われたという経験がある方もいらっしゃるのではないでしょうか。
そういった症状は胃の機能(運動、胃酸などの分泌、痛みの感じ方など)の異常が原因ではないか、との考えから「機能性ディスペプシア」という病名が生まれました。
すなわち『機能性ディスペプシア(FD:functional dyspepsia)』とは、「症状の原因となる明らかな異常がないのに、慢性的にみぞおちの痛み(心窩部痛)や胃もたれ、早期飽満感などのディスペプシア症状を呈する病気」を指します。
昔は慢性胃炎や神経性胃炎などと診断されることもありましたが、2013年、日本国で保険診療名として認可され、診断方法や治療方法のガイドラインが提示されました。
FDの現状
病院受診者の44~53%に見つかるといわれており、FDは決して珍しい病気ではないということが言えます。
これらの患者さんは胃がんや胃潰瘍などの重大な病気がなくても生活の質(QOL)に影響を及ぼすことが多くあり、適切な治療を受けることが重要です。
よくある症状
- 胃もたれ
- 膨満感、早期満腹感
- 心窩部痛(胃痛)、みぞおちの痛み
- 心窩部灼熱感(胸やけ) など
FDの原因
- 胃・十二指腸の運動の障害
食べ物を胃に貯めたり、胃から先に送り出す機能に異常があるケースです。
送り出されるタイミングが早すぎても遅すぎても問題です。
胃に食べ物が貯められない(胃適応性弛緩の障害)は早期飽満感(すぐにお腹がいっぱいになること)の症状につながります。
ストレス、過食、不規則な食生活、喫煙、アルコール摂取などがそのリスク要因になると言われています。 - 胃・十二指腸の知覚過敏
FD患者さんではわずかな刺激(胃の拡張、胃酸などによる十二指腸への刺激)で症状が出ることがあります。 - 心理的要因
脳と腸管は密接に関連(脳腸相関)しており、精神的ストレスが原因で、胃や腸の運動や感覚に変化が起こることがあります。 - その他
胃酸、ヘリコバクター・ピロリ感染、遺伝的要因、感染性腸炎、アルコール多飲、喫煙、生活習慣の乱れを原因として症状が現れることがあります。
診断、治療について
『ゆぐちクリニック』では、日本消化器病学会 専門医、日本消化器内視鏡学会 専門医・指導医として、患者さんに合った治療法を考えます。
- 胃カメラ検査(上部内視鏡検査)、腹部超音波検査などで検査し、胃潰瘍、胆石症などの器質的な疾患を除外することが重要です。
- ヘリコバクター・ピロリの感染有無を検査します。ヘリコバクター・ピロリ感染があれば除菌療法を行うことにより胃の運動能が改善する可能性があります。
- 上記の治療後、症状の軽減・消失がされない場合は『機能性ディスペプシア』として治療を行います。
生活習慣や食生活の改善が重要です。適度に運動する、十分に睡眠をとる、過食せずバランスよく食べる、ストレスを解消する、禁煙、アルコールを控えるなど、まずは自分の生活スタイルを見直しましょう。
お薬による治療では、胃酸の分泌を抑える薬や運動機能を改善する薬、薬方薬などを用い、症状の改善をはかります。
ヘリコバクター・ピロリについて